IE9ピン留め
バンディングの見学
先日、バンディングを見学した。
「バンディングを見学したい」という私の申し出に対し、私が「問題あるバンディング」を批判しているのを承知した上で、「問題提起には腹立たしい思いはあるが、そのように言って、正しく理解しようとしてくれるなら、喜んで…」と言ってくださったバンダーの方の、個人レベルのバンディングを、3日にわたって見学させていただいた。
その方は、名前を出す事に問題はないとおっしゃってくださったが、思わぬご迷惑をかけても申し訳がないので、相談の上、名前を伏せることにし、「Zさん」とした。
これは、あくまでも、私の見方によるバンディング見学記ではあるが、できるだけ冷静で客観的に見る努力をしたつもりである。


Zさんがバンディングを知ったのは12年前、そして6年前にバンダー資格を取った。
年数に比較して、調査経験が豊富なバンダーだと思う。
大変に真面目なバンダーだという第一印象を持った。そして、話すほどに、バンダーとして信念を持ってバンディングに取り組んでいるという思いを強くした。

バンディングに問題提起をしている人達について、Zさんは「みな同一意見の共同体」と見ており、個々の意見の違いを区別するという認識はなかったようだ。私の考えと異なる部分について批判された時には、どのように対応したら良いのか迷うところもあったが、Zさんの意見としての批判を聞く努力をした上で、私なりの説明をしたつもりである。
Zさんの主な批判は、「一般の人に誤解を与えるような書き方をされて、バンダー達は迷惑している。」という事だった。(もちろん、その批判は私にも向けられている。)
「ほとんどのバンダーが真剣に調査に臨んでいるのに、一部のバンダーの行いを、全部のバンダーに当てはめるような書き方がされていることには腹が立つ」と言葉が少し強くなった。Zさんは、この事を会話の中で何度か繰り返し語ったが、私の話を聞こうとする態度は崩さず、感情を抑える事を知っている冷静な方だと思う。

通常、Zさん個人がこの場所で調査を行なう場合、使用するかすみ網は、12mのものを9~10枚、6mのものを1枚。捕獲される鳥は、多い時で数羽。1羽もかからない日もあるという事だった。後日、さらに2度にわたって、同じ場所でバンディングを見学した。
計3回の見学で約20回の網の見回りをした。どの日も、私がいる間には、それぞれ1羽しか網にかからなかったので、3日で3羽の捕獲に立ち合っただけであったが、1時間間隔の網の見回りの間に時間を作ってくださって、バンディングについての説明に当てていただいた事は、大変ありがたく、貴重な体験だった。
見学の際は、写真撮影もOKという事だったが、撮影の為の見学ではないので、ごく普通にバンディング作業を行なうのを邪魔せずに見せていただき、写真を撮るために作業を止めるような事はしない、という事はお互い納得して網の見回りを行った。

★この記事に使用した写真 3枚は、06年6月10日、削除しました。
詳しくは、こちらをご覧ください。


日曜日、Zさんの休日に早朝から夕方まで網を張った。私は10時から見学を開始した。
その日、唯一、網にかかったヒヨドリは、網にかかったまま、ほとんど動かずじっとしていた。Zさんが近づくとバタバタと暴れたが、翼を広げられる状態ではなく、必死で「もがく」という感じの動きである。Zさんの説明によれば、普通、網にかかった鳥は、網にかかった直後に暴れても、逃げられないと観念すると、出来るだけ体力を消耗しないよう、あまり動かないものだそうだ。
網にかかった状態はかろうじて撮影したが、網からはずすのにかかった時間が短く、撮影する暇がなかった。まずは見る事を優先したので、カメラを構えようという思いも薄かった。比較的はずしやすいかかり方だという事だったが、「手際が良い」という印象を持った。

          === 写真 削除 ===

ヒヨドリを鳥袋に入れて網場を一巡し、足輪などの道具が置いてある場所まで戻って、調査用紙に記入する。この程度の場所の移動であれば、捕獲と放鳥は「同じ場所」で行なわれたという認識だと思った。
ヒヨドリは再捕獲で、すでに付いている足輪の番号を読み、鳥袋に入れた状態で体重を量り、羽の長さなどを測る。翼を軽く広げ、尾羽も広げ、羽色などについて、私に簡単な説明をしてくれながら必要な作業をする。これもまた、手際が良いという印象を持って見ていた。私に説明することで、通常の作業より遅くなるような事はない様な気がした。
そこでヒヨドリを放すと、すぐに一直線に木立の方に向って飛んで行った。作業中、ヒヨドリはのどの奥で多少の声をあげたが、はっきりした鳴き声をあげるような事はなかったと記憶している。

          === 写真 削除 ===

シメは、Zさんが網場で捕獲し鳥袋に入れた状態で調査用紙に記入する所に持って来たところから見学した。今回のシメは、カメラが近くになかったので写真は撮っていない。
網からはずすところが見られなかったが、「網からはずす時、クチバシで突付かれた」と言っていた。
袋から出されたシメは、キキッと言っては、夏の時期の特徴だという磨いた鋼のような金属光沢の大きなクチバシで威嚇している。再捕獲なので、すでに足輪は付いていたが、気になるところが有ったのか、プライヤーで足輪を絞め直す。プライヤーに力を入れた時、シメは、キーッ!と声を出して、Zさんの手の中で暴れた。怪我をしたようにも思えないが、確かに、プライヤーに力を入れた時に暴れて声を上げた。
シメは本来、目つきの鋭い鳥なのは知っていたが、「なんとなく目つきが穏やかではない気がする」と感想を言うと、Zさんに「そう思って見るからじゃないですか?」と言われた。

今まで写真でたくさん見た、あの「足を持つ持ち方」で、識別に必要な部分を調べる。シメは翼を広げてバタついたが、しっかりと筋肉のついた足の付け根を持っているせいか、鳥が怪我をすると言った不安は感じなかった。とにかくシメは強気で、キー、キーと威嚇するように声をあげている。「放鳥します」と言ってZさんが手を放すと、シメは、キュイーッ!と鳴きながら、一直線に飛んで行った。
「あの鳥が、枝に止まったとたん、バタッと落っこちると思いますか!」とZさんが聞いたので、「いえー、あのシメは、落っこちるとは思えません」と答えた。あのシメなら、「ケッ!気やすく触ってんじゃねえぞ、バカヤロー!」くらいの事は言っていそうな気がした。だが「あー、必死で抵抗したけど、死ぬかと思った~。ゼイゼイ…」と言っていなかったとも、言いきれない。
この日のヒヨドリは、片方の翼を広げた状態で網にかかっていたので、前回のよりも、暴れる動きが大きい。写真を撮ろうにも、カメラ経験数ヶ月の私には、なかなかピントが合わせられない。やっと撮ったのが、この写真である。網からはずすのには、少し時間がかかった。片足がなかなか網からはずれなかった。鳥袋に入れた時も、中でばたついた。

          === 写真 削除 ===

今回のヒヨドリは、足輪がついていないので、足輪をつける所も見る事ができた。
一度専用のプライヤーで締める。「このように足輪の接続部分が密着していれば問題はないのですが…(足輪の断面から見た時、接続部分が尖った「しずく形」をしている)でも、きちんと形を整えます。」と言って、プライヤーで再度絞める。断面が円形になった。
ヒヨドリは、Zさんの手の中で、まったく身動きしなかった。網からはずす間も、足輪をつける時も、くちばしを半ば開いた状態のままにして、鳴き声をまったく出さなかった。「ヒヨドリは、鳴き声を出しませんね」と言うと、「そうですか? 鳴くのもいますよ。個体差があるんです。」という答えだった。Zさんが手を放すと、前回のヒヨドリ・シメが飛んでいったのとは、違う方角に向って飛んで行った。
しかし、今回のヒヨドリの網のかかり方には、私は、かなりの不安を感じた。
Zさんが手当てなどしないで放鳥したのだから、なんの問題も無かったのだろうが、羽と足の向きが不自然にねじれていたので、もしも他の鳥が網にかかって揺れ動いた刺激で暴れたり、見回りの直後に網にかかって1時間放置された場合などには、足に怪我をする可能性もあるのではないか、という不安は、拭えないでいる。

(※「バンディングのための鳥の捕獲には、かすみ網以外の方法も用いられている事を誤解しないで欲しい」と、Zさんから指摘を受けた。鳥種によっては、無双網、ロケットネット、わな、なども使用され、「手捕り」による捕獲も行なわれる。)

Zさんによれば、バンダーは、鳥相、予想される捕獲数、協力者の人数、その他の条件によって、張る網の数を調整し、無理のないバンディングを行なうとの事だ。
天候など条件の良い時は、通常1時間の間隔で網の見回りを行なう。天候があまり良くない時や、鳥が多くかかる可能性の高い時は、見回りの間隔を短くするなど、臨機応変に対応する。雨は鳥の体温を下げるのでバンディングには充分な注意が必要だが、風はかなりあっても、反対に鳥が網から跳ね返されるので、網にかかる事は少ないという。「風があると鳥が跳ね返される」、という事については、私はまだ実感が持てないでいる。危険はない、という説明を受けたが、網にかかった鳥を2羽しか見ていない段階では、ピンと来ないのが正直な気持ちである。
M「網にかかる瞬間を見てみたいですね」
Z「ここでは無理ですね。渡りの時期とかに、次々に鳥がかかる時なら見られますけど」

今回の調査場所は傾斜のある林の中であるが、開けた場所での鳥の飛行スピードは非常に速い事があり、その勢いで網にかかる衝撃は、かなり大きいような気がしてならない。まして風が有ったら、と不安を感じる。
また、今回張った網の目の大きさでは、ミソサザイのような小型の鳥は、網目をすり抜けてしまうこともあるというのだが、見えない物の与える衝撃は、無いのだろうか?
「風にせよ、網目をすり抜けるにせよ、もし危険があるなら、網の周りに怪我をしたり死んだりした鳥が落ちているはずですが、そんな事はないですよ」との事であった。

かすみ網の撤収も見せていただいた。要するに、絡まらず、次に広げ易いように、丸めてしまっておくわけだが、近日中に調査予定があって、かつ網の盗難の危険がなければ、上下にたぐり寄せて網に鳥がかからないように束ねておけば、鳥には良く見えるので、網をしまわなくても大丈夫だ、という事であった。
鳥相によって、深夜から夜明けまで、そこで行動する鳥がいなければ、網を広げたままでも、危険はない、という事である。バンダーが、鳥の習性に詳しいという事だろう。

足輪10数個をビニル管に通した物を持たせてもらった。
思わず「ああ、軽いもんですね」と声を上げるほど、重さはほとんど感じなかった。確かに、「足輪は金属で出来ている」という認識からすると、予想以上に「軽かった」。
バンダーが、「足輪は、体重の何%だから安全だ」といった説明で、軽さの証明をしようとし、足輪の重さの負担が少ない事を説明したくなる気持ちも、わかるような気がした。
しかし、鳥は、その大きさに比較して、とても軽い生き物である。本当に細い足の小鳥もいる。あの足に、それ以上の負荷を付け加えることも、「足輪を付けていること自体の負担」も、私には、決して「軽い」とは言えないような気がする。

かすみ網にかかって死んだ鳥についても、話を聞いた。
Zさんは、「確かに自分も、落鳥を出した事はある」という事である。「しかし、その数は極少数で、落鳥を出せば非常に苦しい気持ちになり、以後、とても慎重になるものだ」とのことだった。
「落鳥が少ない、というのは、どの程度か?」と問うと、「以前、尾崎室長が佐藤信敏さんの質問に対して答えた1,000羽に4羽くらいという数字は、妥当なものだ」と言うことである。「でも、ちゃんと集計した訳ではないのなら、正しいかどうかは分からないでしょう」と言うと、「自分の体験上でも、そのくらいだと思う。」という答えで、落鳥の集計は、さほど重要ではなく、「足輪をつけた鳥の移動を知る事」が調査の重要な点であるという認識であった。
Zさんは、「一羽でも多くの鳥にバンディングを行なうことは、データを増やすことに繋がる大事な作業だ」、という信念を持っており、「ボランティアのバンダーによる地道なバンディングで、データが蓄積されて行く」、というバンダーとしての自負を感じた。

今回の問題提起で取り上げた「問題あるバンダー」、つまり、一般の人にカワセミのくちばしを持たせたり、捕獲した場所から遠く離れた小学校まで鳥を持って行って子供達に触らせたりしていたバンダーに対しては、「あれは、本当に問題ですね。」という事だったが、私がブログにリンクしたサイトの中には、「特に問題がないものもたくさん含まれている」との意見であった。
つまり、「(下のイラストのような)正しい鳥の持ち方をして撮影している写真を、問題のある持ち方だと危険視して大袈裟に取り上げている」という事である。だが、あのような写真を見て、私が、鳥に危険や負担はないかと不安を感じたのは、事実である。
確かに実際に見たあの持ち方のシメの足は、鶏肉で言えばもも肉の部分を持っているのがわかるくらい、しっかりしたももをしていた。しかし、メジロ、ミソサザイなどの小型の鳥の場合、大人の男性の指の太さとの関係から考えて、同じだとは思えない。ももに当たる部分と言っても、とても小さいし、足も極めて細いのである。写真ではなく、実際に目の前で見てみたいと思う。

私が鳥を持った経験は、友人が飼っていた文鳥やセキセイインコ、鶏のヒヨコに触った事があるくらいだが、非常に軽くて繊細な生き物だという印象を持った。野生の鳥とは違うだろうが、鳥に不慣れな私には、あの持ち方をすることは危険度が高いという思いは、今も消えていない。文鳥を、あの持ち方で持つとしたら、ためらうことだろう。
だが、鳥の全身を撮影するための持ち方としては、これ以外に安全な持ち方は無いのだとすれば、調査上、仕方がないのかもしれない。
M「バンダーが、友人・知人などに撮影をさせていると、時間が長くなって鳥に負担ではないですか?」
Z「負担が、まったく無いとは思っていませんが、ある程度の時間なら問題ありませんよ。バンダーの判断で安全な範囲であれば、見学に来た人に撮影させても問題はないと思います」
さまざまなサイトを見た印象では、撮影が最短の時間で行なわれず、要らぬ負担をかけている印象は今も消えていない。

Zさんと長い時間話して、その人柄に魅力を感じる部分は多々あった。Zさんも、野鳥の事にはあまり詳しくない私が、それなりに調べたり、読んだりしてバンディングを少しでも正しく理解しようとしていることには、理解を示して下さった。
しかし、「そのデータの必要性と、鳥の負担の、どちらを重くみるか」、という点では、考え方には大きな隔たりを感じた。「お互いの感覚的な違いは、いくら時間をかけて話しても、埋めようがない」という点では、意見が一致するしかなかった。

Zさんは「確かに、問題があると言わざるを得ないバンダーもいた事は、バンダーとして驚いているし、腹立たしい。しかし、それは極少数である。バンダー全員が悪いように書かれた事には、腹が立つ」と、何度も言った。
また「問題提起の仕方が間違っている。まず、問題あるバンダーを山階に連絡して、山階が何も対応してくれなかったら、サイトで山階を非難すれば良い。そうすれば、もっと賛同が得られただろうに」とも言った。
そして「最初はスズメ目に限っての問題提起と言っていたようだし、問題あるバンディングの見直しを謳っていたのに、シンボルマークを貼っている人の中には、バンディング絶対反対! かすみ網、絶対反対! と言っている人もいる。問題提起として、おかしいのではないか」とも言った。

今現在の私個人の考えは、「バンディングを統括している山階鳥類研究所に、はっきりさせて欲しい幾つかの問題点がある。その対応をすることをはっきり示して欲しい。その上で見えてきたもので、その後の判断をして行きたい」、というものである。その事は、Zさんとも時間をかけて話した。
だが、「バンディング・かすみ網、絶対反対」、という主張を掲げる人がいても、それもまた、その人の主張であると思っている。
Zさんは、「バンディングを見ないで、サイトの上だけで批判するのは間違いだ」とも言った。しかし私は、バンディングを実際に見ていない人でも、問題点を批判することはできると思うし、それが間違いだとも思っていない。

この点については長くなるので、また、別の項目に関連した事をまとめて書くつもりである。

私のバンディングに対する意見として、この記事を含め3回続けて書こうと思っています。
ご指摘、ご批判のコメントがありましたら、3回全部の記事を公開してからお聞かせいただきたいと思いますので、今は、コメントが書き込めなくなっています。ご了承ください。
by maki371b | 2006-05-06 00:00 | ●私のバンディング問題 | Comments(0)
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